演題番号:PC1-3-4
演題名:「肺癌肺切除術後に急性呼吸不全をきたした1症例」
演者:永井小夜(鳥取大学医学部器官制御外科学麻酔・集中治療医学分野)他8名
本文:
<症例>68歳、女性。肺癌に対し胸腔鏡下右下葉切除術が施行された。術後3日目に呼吸困難出現し、7日目より胸部X線で両側性の浸潤影が広がった。ARDSと診断しシベレスタットナトリウムの投与を開始した。11日目急性間質性肺炎(AIP)を考慮し、ステロイドセミパルスを開始した。12日目胸部X線所見はさらに悪化し、胸部CTで両側性び慢性すりガラス陰影を認めた。ICUに入室し、lung protective strategyで人工呼吸管理とした。感染所見は明らかでなく、ARDS後期と考えステロイドの投与は継続した。標準的なARDSの治療では状態の改善がなかったため17、18日目エンドトキシン吸着療法(PMX)を施行した。KL-6は低下したが酸素化の改善はなかった。19日目に再度ステロイドセミパルスを施行した。20日目菌血症に陥り、25日目に永眠された。<考察>ALI/ARDSの定義は幅広く、さまざまな発症過程を含んでいる。一方、肺癌肺切除術後の手術関連死亡率は1-3%と報告されており、その約3割が特発性肺線維症(IPF)の急性増悪やAIPが占める。AIPは臨床病理学的疾患概念であり、臨床症状はARDSと同様で、病理所見もDiffuse Alveolar Damage という点で酷似している。AIPならば早期のステロイドパルス療法が推奨されるが、今回の症例ではARDSとして治療を進めたため、早期のステロイドパルス療法は施行しなかった。最近、ARDSやIPFの急性増悪に対してPMXの有効性を示唆する報告があり本症例でも試みたが、PMXは奏効せず、むしろその後のステロイド増量とあいまって免疫能を強く抑制し、結局は感染を引き起こし状態をさらに悪化させたと考えられた。ARDSとAIPの鑑別と治療方針の決定は非常に困難であり、本症例でARDSとAIPの間を取るような治療経過となってしまったことは、それぞれの治療手段のタイミングを悪くしたと思われた。
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